アメリカでクレジットカードが受け入れられた理由 |

アメリカでクレジットカードが受け入れられた理由
キリスト教文化圏であるヨーロッパでは、長い間貸金業は蔑まれてきた。
ハムラビ法典には、金を借りて返せないときには本人または家族が一定期間就労しなければならない、というクレジットの基礎的なルールのような表記が見られるし、旧約聖書にも高利貸しを戒める言葉がある。
※(レビ記25章37節)「汝、彼に汝の金を高利で与えるなかれ、彼に汝の食べ物を増やすために貸すなかれ」
戒律によるタブーの多いキリスト教に比べ、人間の欲望をある程度肯定し、それをコントロールすることを重んじるユダヤ教では、貸金業も禁止されてはいない。結果的にユダヤ人の中には貸金業に従事し、成功するものが多くなり、それへの嫉妬心のような形で「高利貸しはユダヤ人の仕事」「金貸しのユダヤ人は強欲」というイメージを形成され、蔑まれてきたことにもそれは端的に表れている(シェークスピアの「ヴェニスの商人」に出てくる悪役としての高利貸し・シャイロックは、その代表的なものであろう)。
しかし、こうした「縛り」は社会が裕福になり、個人の欲望が肥大化していくと徐々に解体されていくしかない。
戦争が終わり開放的になった時代の空気と、経済的な成長。戦禍に疲弊したヨーロッパに対し、新しい世界を自分たちが築き上げていくのだ、という進取気質に富んだアメリカが国をあげて豊かさに向けて走りだした時代は、そのまま現代に続く大量消費活動に邁進する時期と重なっていく。
アメリカでは第二次世界大戦後に訪れた経済成長により、自家用車や住宅、大型家電(洗濯機、食洗機)等の需要が高まった。また豊かで文化的な生活へのあこがれも強まり、生活必需品でない大型ピアノのような高価な娯楽品も購入されるようになっていった。
大型で高価なこうした商品は、これまで富裕層にしか購入出来ないものであった。しかしクレジットカードの分割払いやリボルビング払いという機能によって、一般の消費者にも同じ商品を手にすることが可能となっていく。
手元に現金がなくとも、各地に続々展開された大型百貨店に並ぶあらゆる消費財を容易に手に出来るクレジットカードの存在が、このときのアメリカ国民に圧倒的に支持されたであろうことは想像に難くない。
クレジットカードこそが「アメリカの夢」を体現したもののひとつであったのだ。